加藤哲

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「何をぼーっとしてるの?」 俺の顔を、二重瞼の黒髪の女子高生がのぞきこむ。 浅岡サラ。俺の初めて彼女と言えるような人だ。 クォーターかなんかで、よくモデルにスカウトされるとか言うが、本人は歌手になりたいとかで断っているらしい。 俺はアイドルならいけるんじゃないか?というのだが、彼女曰く 「私は顔で売れたいんじゃないのよ、声で売れたいの。声がよければ買ってくれるし、悪ければ一人も買わない。シンプルなのよ。だけど、聴いてもらわなければいけないから路上ライブをやってるってわけ。」 俺はふぅん、とうなずく。 彼女なりの考え方があるのだろう、と思った。 「あなたが一番に足を止めてくれて、嬉しかったの。初めての路上ライブだったから心細くて...おじさんとかに絡まれたりしてくれたのを助けてくれて嬉しかったの。」 なぜ俺と付き合ったのかと聞くと、こう答えた。 その答えを聞いたとき、この女性を一生守ってやろう、と思ったのだ。 友人には笑われたが、本気で思った。 ハッとみると彼女はまだこちらをみていた。 「ん、色々考え事してた。」 「そっか」 そう笑う彼女のえくぼをいとおしく見る。 彼女は絶対てばなさい。 心にそう誓った。
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