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カタカタカタカタ。
カチッ。
僕はこの音が好きだ。
パソコンのキーボードが音楽を奏でるように押されていく。
マウスが心地よい余韻を残して最後のシメ。
亞月は満足気ににんまりと笑うと机の前から離れた。
ココアを一口飲むとまた机と向き合う。
亞月はとある業界では天才ハッカーと呼ばれていた。
誰に習ったわけでもなくパソコンを物心ついたときには自由自在に操っていた。
まるで亞月のからだの一部のようにパソコンは動いていく。
亞月は腕の良さをいかして頼まれた所へハッキングするという仕事をしていた。
個人的な恨みから国のものまで、なんでも請け負った。
亞月は警察なんかには負けない自信があった。
警察の「お散歩ルート」なんかには負けないと思った。
「...ん?」
依頼のメールを見ていると気になるものを発見した。
「警察から情報を盗んでください。とある被告の情報が隠蔽されている可能性があるのです。その被告は罪をかせられているだけなのです。」
なんだこれは。痛メールか?
「お金はちゃんと初めに振り込みます。from紀子」
「としこかのりこさんか...ま、金さえ払ってくれればいいかな。」
亞月は返信のボタンをクリックした。
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