ユウルを探して

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 もう決勝戦なのか。あっけなかったな。  また石に囲まれた長い廊下を進む。無駄な運動だ。これでさらに運動しなければならないのだから、嫌になってしまう。まあ、学校で教官にどやされる実戦の授業よりずっといいが。  大きな広間にでる。目の前にはすでに相手の二人がいる。一人は痩せていて柔和そうな感じの人。黒髪がこの地域では珍しい。どう見ても戦う人間には見えないが。もう一人はローブを着たカーラさんぐらいの背丈の人。性別は分からない。  うるさい司会の声と一緒に、試合開始の合図の音がする。 「りっくん。男の人の気を引いて」 「分かりました」  動こうとしない二人。嫌な予感がするが、ここで引くことはできない。  男に向かって剣を振るった。首のあたりに斬りかかってみる。当然、止められて流される。危うく剣を落としてしまいそうになった。どうしてだ。あの見た目でどこからあのような力がわくのだろう。  勝てる気がしない。いや。そこはいいのだ。カーラさんは気を引けと言っていた。別にこの人に今一人で勝たなくていいのだ。  とりあえず、カーラさん達から離れるよう、右側に足を一回蹴る。あたりまえのように男はおれにくっついてきて剣を横になぐ。頭を狙ったのだろうか。あれをくらったらきっとおれは負けだろう。  体をそった後、手をついて後ろに一回転してみる。距離は当たり前の様に詰められて、今度は脇腹を狙われる。さすがに避けようがないので受け止める。  重い。また剣を離しそうになった。この状況では引くにも引けないから、腹に膝を入れてみる。  相手の力が少しだけ弱まったすきに、剣を引き、さらにカーラさんたちから離れる。当然くっついてくる男。服の中から出てくる、紅石。首につるしていたのか。  まずい。変な空気を感じる。距離を取る。魔術か。あれ、魔術は使って良かったのだろうか。あ、いや良かったはずだ。相手が死なない程度であればだが。まずいな。  大きな水の玉が飛んでくる。いや、これってむしろチャンスではないだろうか。  また剣を離しそうになったがなんとか受け止めた。さっそく強い雷のイメージをする。水が電気を通してくれるのだ。あまりに強い電気なら近くによるだけで、感電してくれるはず。
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