死神少女

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「おい、貧民!」  同じクラスにいる格の高い貴族のおぼっちゃまだ。フェルセン家だったか。隣には気の弱そうな取り巻きがいる。武家として有名なリヴィエ家関係だった気もするが。 「なんでしょうか」 「きったねぇ靴! こんな汚え靴をはいてられるような召使いがこの時間にここにいるとは悠長だな」 「いえ、一応二等兵と同じ扱いではあるのですが」 「二等兵? その辺の召使いと同じだろう? 生意気な口を利くんじゃない!」  まただ。この間の考査でおれより下だったのがしゃくに触ったらしい。それから随分経ったはずだと言うのに、根気強くいじめたがる。その執念と労力を別のところに使えばいいというのに。 「んだよ! 貧民! すかした顔しやがって!」  貴族様の拳が頬を掠める。速いから避けきれなかった。頬がじんじんする。思わず痛っと言ってしまいそうだったが、我慢した。 「申し訳ありません」  頭を下げる。これ以上は面倒だ。何か問題が起こったら、向こうにいくら正当性がなくてもなくなるのはおれの首だ。どうにもできない。 「分かればいいんだよ、このグズめ!」   グズはお前だ。身分をいいことに好き放題しあがって。座学ぐらい自分で勉強すればいくらでも点数になるだろうが。  と、心の中で貴族様の背中に向かって言ってみる。 ※  訓練後、歴史。三時間の訓練の後に、だ。周りより鈍い方に分類されるおれはいつも怒鳴られる。  何故だ。おれより鈍い奴はいるはずなのだが。今日は「筆記だけよくてもお前みたいなのろまが軍人になれるか!」と教官に言われた。おれは好きでそうしているわけではない。  その良く分からない絡まれ方した後に、歴史だ。授業そのものは面白い。  ただ、テストがひたすらに難しいのだ。そのひたすらに難しいテストが十日に一度やってくる。それで、今日はテストの返却日なわけだ。テスト直しをしなければならないと思うとげろが出てきそう。 「テスト返すよー」  歴史担当であり、我がクラスの担当でもあるリーザ教官だ。若くて綺麗だから、最初こそもてはやされていたが、今や鬼畜教官として恐れられている。
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