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「レザリアでエリサといただろ」
「は?」
拍子抜けした。エリサとは離れられないから、一緒にいただけだ。何か引っかかることでもあるのだろうか。
「見たぞ」
「あ、ちょっと。レナート」
「さっきもふたりきりで買い物してた」
「レナート!」
だからどうした。
「あ、あの、すいません」
「いいですよ。おれはリクです。隣にいるのはいとこの」
「カーラです」
「ぼくは、ラウル、です」
座っているレナートに笑顔で覗き込むカーラさん。ふいっと顔を逸らすレナート。少し顔が赤い。ああ、そういうことか。
「どうしたの、レナート君?」
意地が悪いカーラさん。本当、悪役にしか見えない。
「あの、リクさん。聞きたいことがあるんですけど」
「何ですか?」
「いや、あの。夜、二人で食事しませんか?」
「へ?」
「もし、良かったら」
「いいじゃない。りっくん。こんなかわいい子と食事よ!」
いや、いきなり誘われても困るのだが。どうしようか。二人きり。別に恨まれているとは思っていないが、何がしたいのだろう。
「あの、エリサとレナート君も一緒はどうですか?」
ううん。と言うラウルさん。ああ、そうか何か問題があるから、二人でと言ったのだろう。何だろう。
「あ、レナート君」
「何」
「エリサと二人きりでご飯食べない?」
「食べる」
明るい顔になるレナート君。少し複雑な気分だがまあいい。何かあるなら情報を得た方がいいだろう。
「……やはり四人でないとだめですか?」
「いや、二人でいいですよ。エリサとレナート君眺めながら食べませんか?」
「……分かりました」
唐突にもほどがあるだろう。だから、近くにエリサを置いておこうと思った。ああ、エリサに何を言われるだろうか。
※
「一つ訊いていいか」
何も嫌がらず、レナート君と食事することを受け入れたエリサ。いつもなら勝手に予定を入れないでよと怒るだろうから、驚きだ。
「レナートとの関係でしょう? 私が指導されてた時にじじいが担当してたの。懐かしいわあ。あの後一回会ってからご無沙汰してたのよね。もう八年ぶり」
この八年間。きっとレナート君はエリサを見ては話しかけてこなかったのだろう。ああ、可哀想に。
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