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「レナートが見とれてるから、何だと思って見たんです。したら女の人の隣にリク兄いたので。その時は赤毛だったし。その、言ったら悪いんですけど」
「赤毛は目立つから、だろう?」
「……はい。フィスで見かけた時は、エリサさんといたので。一瞬誰かなと思ったんですけど、顔がリク兄だったので……で、その」
ああ。これからが本題か。コップにそそがれた水を飲む。
「リク兄。何かしたんですか?」
それか。いや、なんとなく訊かれることは分かっていた。国家反逆罪で追われていることになっている。ここまでのんびりしていると忘れてしまうが。
きっと彼には犯罪者として目に映っているのだろう。
「分からない」
「……え?」
「理由は分からないが、国がおれを殺したがってるんだ」
黙々と食べるラウ。おれが何を言っているのか理解しかねてなのか。単に気まずいだけなのであろうか。
「国としては、存在が罪だって」
「どうして?」
「それを調べてる」
「……すいません。こんなこと訊いて」
「いいよ。これはおれがエリサに願った事なんだし。ちなみに、ラウの願い事は?」
ラウは持っていたフォークを置いた。そしてさっき口に入れたものを飲み込むと、じっとこっちを見た。嫌なら嫌で答えなければいいことだというのに、迷っているのだろうか。
「あの、笑いません?」
「笑う必要性はないからな」
「……その、お世話になった人にお別れを言う為です」
ラウらしくていいじゃないかと言ってから気がついた。ではなぜコロッセウムにいたのだ。全く関係ないはずだろう。
「国中をまわっていろいろ見たかったのもありますけどね。本当。コーク王国、すごく広かったなあ」
そういうことか。フィスで有名なものと言えばコロッセウムだ。ラウならば出たいとでも言うだろう。
「まあ、大陸まるまる一つが一つの国だからな」
「あの、地域によって全然文化が違うんですよ。言葉とか食べ物とか」
「これだけ広い国なら、方言もたくさんあるし、食文化が違うのも当たり前だと思うけどな」
「……リク兄。感動って言葉を知ってますか?」
意味も用法も知っている。と答えたらきっと余計に呆れられるだろう。姉さんにも毎日のように呆れられていた気がするし、エリサには随分ののしられてきたわけだし。
「……ああ。まあ」
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