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白猫は欠伸をした。
ベッドに座っているカーラの膝の上で、毛繕いをしている時だった。膝はベッドのようにふかふかしていない上に狭い。けれど、暖かみがあって白猫は大好きだった。
白猫にとって活動時間が長いのはつらい。しかし、この姿を彼に見せたくなかった。彼の気が自分に向いているのかどうかは分からない。けれど、この姿に彼が慣れてしまったら自分に全く気が向かなくなることは明白だ。
「いい加減、告白でもしたら?」
「うっうるさい!」
白猫はカーラの膝から飛び降りる。そして、カーラが座っていないベッドの上に飛び乗る。
「それよりも、そうよ。あんた、本当に渡すわけ?」
カーラが立ち上がる。伸びをして窓に目をやる。白猫はカーラの背中をじっと見つめてみる。ぴくりとも動かない。
「ねえ、あれは。未来の彼に渡してって言われたものじゃない!」
「未来の彼はいないよ?」
「…………でも」
白猫にも彼がもうきちんとした生の中にいないことは分かっていた。けれど、目の前で浄化していった赤毛の女が頭に浮かぶ。
彼女が言ったことが本当かどうかは分からない。彼なら普通に願いが叶ったら彼女と同じように次の生へと旅立っていけるのではないかと白猫は思う。
けれど、彼女の願いを守りたい。この思いを捨てることがどうしてもできなかった。
「らーやんね、あの子がこんなことになるなんて思ってなかったんだよ。だけど、状況は変わった。今の彼に渡して問題にはならないし、それにきっとあれを渡さなくたって」
彼は絶対、答えにたどり着く。
それは白猫にも分かりきったことであった。
「そう、よね」
「ねえ、何がそんなに心配なの?」
「な、何がって!」
「だって、あの子も私もこれから願いを叶えて、浄化されるだけでしょ?」
「そ、そうだけど……!」
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