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翔吾さんと付き合い始めて2ヶ月が経った頃。
季節は秋に変わり、暑さは日に日に遠ざかって行った。
「今日はまた少し気温下がりましたね…」
「そうだな…風が冷たい」
大通りを翔吾さんと歩きながら空を見上げると、鉛色の空が広がっていた。
久しぶりに休日がかぶったから2人でデートだったのに。
「あっ!あそこですね!」
細く高いビルが目に入り、そのビルに翔吾さんと入って行く。
甘い香りが鼻を擽り、口元が自然とにやける。
チラシで見たケーキ屋さんだ。
美味しそうだと言ったら、翔吾さんが連れて来てくれた。
「ご注文はお決まりですか?」
愛想のいい店員さんに声をかけられ、翔吾さんとケーキを眺める。
ショートケーキ、チーズケーキ、モンブラン、タルト、ミルフィーユ、ミニクレープ、プリン、チョコレートケーキ…
輝かしいケーキ達が俺を見つめてる。
「チョコ…んー、いや……モンブラ……んー、でもっ」
チョコレートケーキとモンブランで迷う。
究極の選択だ。
「チョコレートケーキとモンブランください」
不意に翔吾さんの声が聞こえる。
「その2つで悩んでいるんだろう?」
声に出ていたぞと笑われる。
心の声が漏れていたらしい。
出されたケーキ2つを持って、店内の白いテーブルに座る。
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