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窓の外に知り合いとかいたらどうしよう…。
そんな事を思いながら大通りからしばらく歩いて、小さな公園に入る。
いくら付き合ってるからって…
「千里君」
「…はい?」
ワントーン下がった声音から、何か大事な事を言おうとしているのが感じ取れた。
「千里君は、男と付き合うという事が、重荷であったりするか?」
「え…」
「俺と付き合っている事を、他人に知られるのは嫌か?」
「…どうして、ですか?」
嫌なはずない。
どうせだったら言いふらしてやりたいくらいだ。
でも…
「俺は…"俺"が嫌だ!こんな、"俺"が嫌なんです!翔吾さんが嫌だなんて微塵も思わない!」
「…せ、んり…君?」
「いつだって…自分に自信がなかった。翔吾さんみたいな人の隣に俺がいていいのか。そのくせ、一之瀬さんや会った事もない翔吾さんの同僚や上司に嫉妬して…っ」
そうだ。
あの時、窓の外を気にしたのも、翔吾さんの相手が"俺"だったからだ。
ばれたくないのも、俺のせいで翔吾さんのレベルが落ちるのが恐いからだ。
そのせいで、俺が…翔吾さんが俺から、離れられるのが恐いからだ。
「いつだって…俺は、俺の事ばかり…」
何で俺…こんなになったんだろ。
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