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「君は、簡単に俺の不安を消すな…」
「ふぇ?」
右手を引かれてコツンと額と額を合わせる。
「俺も嫉妬したよ。君を取られるのを何より恐れた」
翔吾さんが、シット?
俺と、同じ事をして、俺と、同じ事を考えていた?
「それに、ただ聞いておきたかっただけなんだ。きっと、この先"男と付き合う"というだけで、沢山苦労する。男女のようにおおっぴらに手をつなぐ事もできないだろう」
額を離して、お互いの顔を見ると、夕焼けで少し赤く染まっていた。
「それでも、俺と一緒にいてくれるか…本当に君に俺がふさわしいのか、君の将来の足を引っ張らないか…不安だった」
「そんな事っ」
「うん。もう、迷わないから」
決心したかのような瞳と声音。
整った顔が夕日に照らされて、見惚れるほどに綺麗だ。
「それと、あまり自分を卑下するな。こんなに可愛くて、優しいんだから…」
ふっと優しく笑うと、行こう、とだけ言って翔吾さんはゆっくり歩き出した。
俺も後に続いて隣で歩く。
「俺、ずっと一緒にいたいです。他人に何を言われても、どんなに苦労しても」
「あぁ、俺もだよ」
触れるか触れないかくらいの距離を保って、ゆっくり、けど確実に俺と翔吾さんは歩いた。
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