第2章

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大通りの桜も、葉桜になり、あったかくなった頃。 永田さんはすっかりオープンカフェの常連になっていた。 俺がバイトの時はほぼ毎日来てくれている。 会社が近くにあるみたいで、昼休憩とかに、よくランチセットとコーヒーを飲んでいる。 「あ、いらっしゃいませ!永田さんっ」 12時20分。 これが永田さんが店に来る時間だ。 俺はいつの間にかこの時間がずいぶんと楽しみになっていた。 「「ブラックコーヒーとランチセット」」 俺の声と永田さんの声が重なる。 驚いたように目を見開くと、パチパチと瞬きを繰り返した。 永田さんの表情がこんなにハッキリ動いたのは初めてだ。 可愛いなぁ、とクスッと心の中で笑う。 「永田さん最近毎日来てくれてるし、いつも同じやつ頼むんですもん。覚えちゃいました」 「そ、うか…。ここのコーヒーとランチセットはスゴく美味しいから、クセになったのかな」 照れたように笑うと、俺の口も自然にゆるんだ。 あぁ、この人もこんな風に照れるのか…。
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