第1章

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ほのかに香る柑橘系の石鹸。 フカフカとした地面と、冷たい額。 気持ちいい。 薄っすらと瞳を開くと、知らない天井が目に入った。 どこだ?ここは…。 「…あ、起きたか?」 男性の声がほぼ真上から聞こえる。 聞いた事のない声だ。 誰だろう? 「体調はどうだ?どこか痛いとことかあるか?」 体調?痛い? 「…ふぇ?」 回らない頭を頑張って使った結果、俺の口からは素っ頓狂な声が出た。 「まだ寝ぼけてるのか?」 さらりと前髪が額を流れる。 細くて冷たい指で撫でてもらうと、不思議な安心感が湧いてきた。 「…ん……だい、じょぶ…」 「もう少し寝るといい。軽い貧血のようだと医者も言っていた」 低くて優しさを含む声。 ひやっとした指で瞼を閉じられると、意識は急速に遠退いた。 ---- ----------- ------------------- ------------------------
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