第1章

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翌日。 カーテンの隙間から漏れる太陽の明かりで目が覚める。 眩しくて寝返りをうつと、柑橘系の香りが肺に広がった。 あぁ、そうだ。 永田さん…ナガタサン? 「ああぁ!!」 倒れてご飯まで奢ってもらった上、夜遅いと泊めてもらったんだ。 始発…は?今何時? 壁時計を見ると、10時と針がさしていた。 「どんだけ寝こけたんだ俺!?」 ガバッと起き上がると、トントントン…と何かを切る音が聞こえる。 「起きたのか?千里君」 キッチンからひょっこりと顔を出す永田さんは、胸の辺りにパンダのアップリケのついたエプロンを着ていた。 「すすすすみません!しはっ始発!」 「今日は有休をとった。気にしなくていいさ。なかなか面白い寝言も聞けたしな」 クスクスと笑うと、永田さんはキッチンへ戻って行った。 有休まで取らせてしまった…。 「ねご、と…?」 俺って寝言いう人だったんだ…。 面白いって何だろう…? 「俺も8時くらいに目が覚めたんだ。朝昼と兼用になるが、食べるといい」 スクランブルエッグと、小皿にのったサラダ。 ほどよく焼かれたトーストと、カップに入った牛乳がガラス製のテーブルに置かれた。 「あ、ありがとうございます」 「家にあった物しかないからあまりいい物ではないがな」 「いえ!めちゃくちゃ美味そうっ!」 たぶんぱぁっと顔が明るくなる。 人の手料理を食べるのはスゴく久しぶりだ。
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