第1章

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達樹がグラウンドへ戻った後、そのまま廊下に立ち尽くしていた。 窓に目を向けるとグラウンドに涼の姿が見えた。 サッカーボールを追って、元気に走り回っている。 いつもの風景だった。 涼の少し前屈みになって走る癖。 華奢な身体のわりに筋肉質で、がっちりした両脚。 失敗すると、天を仰いだり、大げさに頭を両手で覆ったりする仕草。 どんなに遠くても、涼の姿なら直ぐに分かる。 あんまり近すぎて、ここまで涼のことをここまで思っていた自分に今ごろ気 付いた。 涼も遠くからでもわたしの姿が分かるのだろう。 お互い、それほど相手を思い合っていた。 この上ない幸せだと思った。 あのマネージャーはわたしたちと同じような気持ちで、いつも青木クンを見ていたんだろう。
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