その男ジョージ

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 5月も終わりに差し掛かった現在、今年は少しばかり早めの暑さがやってきたせいか深夜でも暑苦しいと感じることがある。  流石に冷房をつけるのは躊躇われる時期のため、私は体勢を起こしベッドに隣接した壁の窓を網戸と入れ換えるようにして開けた。直後にジメッとした空気が顔に触れる。どうやら梅雨はもうすぐのようである。  深夜の町はとても静かで、車の音はもちろん人の話し声さえ聞こえない。2階から見える程度などたかが知れているが、町には外灯がポツポツと辺りを怪しく照らしているだけで、民家には明かりなどついてはいなかった。  そんな光景を見ていると、まるでこの世界に私だけが取り残されたような感覚に陥ってしまうのだ。私はこの感覚が嫌いではない。誰とも関わることなく、ただ一人で生きているとしみじみ感じられるのだから。  
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