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教室を出てすぐ左に、下足室から昇ってきた階段がある。愛指さんを撒くために、私は毎日その階段をランダムに進む。降りても昇っても行く先はそれぞれに一ヶ所ずつしかないのだけれど、それでも少しは時間を稼げる。
若干いつもより軽く感じるスクールバッグに違和感を感じながらも、本日は階段を昇った先の屋上へ向かうことにした。きっと空腹による力の加減違いだろう。
スカートを翻し、脱兎の如く駆けていく。持ったスクールバッグでスカートの中を隠している余裕もないが、それでも私は気にせず走る。
肩が大きく上下するほどに息を切らしながら辿り着いた屋上の扉。創作の世界なら本来、屋上とは全校生徒の絶好の休憩場所に成りうるものである。しかし、この学校には屋上にお昼を食べに来る生徒など存在しない。
所々ヒビの入った白地の壁に囲まれた、冷たく重い鉄の扉。古くなり少し立て付けの悪くなった扉から響く耳障りな音を浴びながら、私は屋上へと踏み出した。
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