その男ジョージ

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「大人っぽい? 私が?」  確かに実年齢よりも歳上に間違われることはよくあるけれど、今まで大人っぽいと言われたことは無かった。どうせ老けてみられるのだと諦めていたものだからその言葉は素直に嬉しく感じた。 「うん、とっても綺麗だし髪も長いし声も素敵だよ……あと、し、下着も……黒いし」  前言撤回。全く嬉しくなかった。最後のゴニョゴニョした台詞で全てが台無しである。私は思わず顔を抑えてしまった。 「お願いだからその事は忘れてくれないかしら」 「あっ、ごめんね。下着の色なんて好みだもんね。黒だからって大丈夫だよ! ちょっとエッチに見えるだけだよ!」  何なのよこの罰ゲームは。全くフォローになってないし、そもそも大きな声でそんなことを言わないでほしい。  赤面に赤面を重ねた私は、体温が高くなったせいか、瞳に涙を溜めてしまっていた。それに気付いた愛指さんがまた大きな声でフォローになっていないフォローを繰り返すという負のループが駅まで続いたのであった。
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