その男ジョージ

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 電車に乗り込んだ私たちは他愛もない会話を交わしていた。今度の中間テストの事や好きな食べ物の話、休日は何をして過ごしているのか。  そんな何でもない話をしたのも半年ぶりであった。いつもは愛指さんが私の下校についてきても、特に私は彼女と会話を交わそうとはせず、全て生返事で対処していたからだ。  だけど何故だろうか? お弁当を貰ったからなのか、今日は少し愛指さんと話してみたくなったのだ。私たちの会話は不毛であったけれど、不思議と居心地は悪くなかった。  愛指さんは私の事について深く聞いてくることはなかった。ただ興味がなかったのか、それとも聞いてはいけないとそれとなく察しているのか、とにかく私に対して深く踏み込んだ話はしてこなかったのだ。  いつもなら本を読んで過ごす電車内の時間は、愛指さんとの会話で早く感じた。気が付いたら駅まで辿り着いていて私たちはそのまま降車した。
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