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改札での茶番にとにかく羞恥心しか感じなかった私は取り合えず二人を外へと引っ張っることにした。
電車内の涼しさに慣れていた私は、日が当たる場所へ出ると梅雨前の湿気が体に張り付き、駅周辺に設置された温度計の表示よりも暑さを感じた。
さて、色々聞きたいことがあるのだけれど立ち止まって話を聞くのも馬鹿らしいので、私たちは帰路につきながら話をすることにした。
「早速だけど、どうしてあなた達はそんなに仲良くしゃべっているのかしら?」
絶賛私の隣で仲睦まじく話す二人にまず聞かなければならないことはこれである。聞き間違いでなければ愛指さんはジョージの事を君付けで呼んでいた筈である。
「おや稔子さん、もしかして嫉妬ですか?」
「どう受け取ったらそうなるのよ」
最早お決まりのジョージの言葉に私は即座にツッコミを入れた。なんとなく来る気はしていたのだ。
「あのね稔子ちゃん、これは違うの。私が昨日ね――」
浮気現場を目撃された愛人さながら、愛指さんは小さな両手を一杯に広げジョージを庇いだした。しかしその助け船にジョージはお構い無しに言葉を重ねたのであった。
「いとさんが悪漢に襲われていたのでお助けした次第であります」
どうやら話はややこしくなりそうである。
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