その男ジョージ

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「で、結局その人はどうなったのよ?」 「はい、慌てて走って行きました。私の手にかかればちょちょいのちょいです」  当初した質問の答えから遠退いてしまったが、つまるところ愛指さんが困っているところにジョージが現れたということらしい。  その後の展開は聞いていないけれど、この二人なら五秒で仲良くなる様子が容易に想像できる。色々と面倒くさいからこれ以上深く聞くのはやめよう。  一連のやり取りが終わり、ようやく愛指さんが私から離れるとジョージの元へ小走りで駆けていった。私が殴った頬を心配しているようだった。 「そう言えばジョージ、どうして貴方が愛指さんを名前で呼んでいるのかしら?」  愛指さんが背伸びをしてジョージのスーツについた汚れを払っている最中に私は聞いた。 「名前で呼び合うことはとても大切なことですから」  胸を張りながらジョージは言う。確かにそうだとは思うけれど、なんだか愛指さんって呼びづらくなるじゃない。
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