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◇◆◇
この世に神はいないのか。
銀瑤は茫然と虚空を仰いだ。
「……負け、ました」
額に手を宛て絞り出すように負けを口にすれば眼前のイーグルは喜色満面とばかりの笑みで喜びを顕している。
銀瑤は項垂れた。
信じたくない。
対戦相手は父くらいとは言えそれなりに強いと自負していたのに。
「………銀瑤 君、気づいてないの?」
不思議そうに問うてくるイーグルに銀瑤は胡乱気な顔をする。
何がだ。
「いや、君 駒を動かす時悪手とか好手を打つといちいち耳と尻尾が動くんだよ」
「は?」
イーグルの台詞は銀瑤には晴天の霹靂だった。
つまり。
表情には出てなくても悪手を打てば銀瑤の耳と尻尾は垂れ、好手ならばぴんと立つ。
そういうことらしい。
「っ!ならこの勝負は無効です!!」
「えー ダメだよ 負けは負けでしょ?銀瑤」
自分でも無茶苦茶言っているのは解るが納得行かずに銀瑤が叫ぶもイーグルはあっさり切り捨てる。
「約束は約束、だよね?銀瑤」
にっこりと微笑むその端整な面差しがまるで、鬼に見えたと後に銀瑤は語った。
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