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ポスト
早馬駿はサングラスをかけてバーの片隅で水割りを飲みながら煙草を吸っていた。
よれよれのジャケットとズホンという地味なスタイル。余計な物は身につけない主義であり、古ぼけたずた袋を持っている他はペンダントを胸の真ん中にくるように首にかけているのみである。
ちなみにこのバーは裏取引や地下銀行等に利用される店であり、一般の人には存在さえも知られていない。
周囲の客も胡散臭そうな者たちばかりだ。
やがて駿の隣に黒服で涼しげな顔をした男が座った。
男と駿は互いのモバイルでデータを交換して依頼人と運び屋であることを確認した。
「ふ~ん、あんたみたいな華奢なのがポストってワケか。これから大事なブツを運んでもらうのに酒なんか飲んで大丈夫なのか?」
「心配するな、ノンアルコールだ」
駿は酒に強いし、運び屋といっても闇の稼業のようなものだから、多少の酒を飲んでも問題なく仕事をこなしてきた。
実はこのノンアルコールを飲む前に2杯ほど酒を飲んでいた・・。
男は死の商人と呼ばれる武器マフィアの番頭格のジン。今回の依頼は地球を侵略しにきた宇宙帝国に最凶最悪の兵器を届けること。
この武器はスレイブレーザーと呼ばれるもので、放射すれば浴びた人間たちを奴隷として意のままに操ることができる。
武器マフィアは宇宙警察にマークされているから、ヘタに運びをすれば危険が大きいし、何より宇宙帝国は人間やマフィアが雇っている怪人でさえも近づけないようなマグマが煮えたぎった衛星を根城にしている。
だからあらゆる所にブツを届けてくれる闇の運び屋に依頼がきたというワケだ。
どんな汚い取引でも金を儲けることを追及するマフィアのドンは、闇ではあるが自分の組織が売る武器に対する絶対の自信や金に対する執着はある意味純粋で強い心だから虹色のポストを見ることができた。
そして依頼状に記したとおり自分の右腕的な存在のジンを運び屋に遣わしたというワケだ。
ジンがスレイブレーザーの保管場所に案内すると言うので車に乗り込もうとした駿の前に10体程の怪人軍団が現れた。
「悪く思わないでくれよ。こちらも命を懸けた一大取引なんでな。きちんと運んでもらえるかどうか試させてもらう」
「なるほど、そういうワケか。ならばお見せしよう、どんな敵でも押しのけて仕事を遂行するオレの力を」
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