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「え、あ、……わたしは、椎名 咲笑(しいな えみ)といいます。」
彼女はしどろもどろに、自己紹介を始めた。
俺は呆然としながら、彼女を凝視した。
黒目がちな大きな瞳を捉えようとするも、彼女はその度に恥ずかしそうに目を泳がせて、最終的には俯いてしまった。
椎名 咲笑、……知らない。
と、いうか俺、まさかとは思うけど。
「俺、君に手、……出してないよね?」
彼女の名前とかそんなことよりも、変なことをしてしまってはいないかが気になった。
彼女はかあ、と顔を赤らめたので、俺はぞっとした。
「……はい、大丈夫です。」
なにもなかったんなら、そんな紛らわしい反応しないでほしい。
とりあえずズキズキと痛む頭をなんとかしようと、ベッドから立ち上がると、すぐそばの硝子テーブルの上に、とても美味しそうなご飯が並べてあった。
「……すみません、勝手にキッチン借りちゃって。その、簡単なものだけなんですけれど、居候させて頂くならせめてご飯くらい、と思いまして。」
無言で彼女の方に目を向けると、とても申し訳なさそうにそう話した。
……ちょっと待って、居候?
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