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俺たちの横を通り過ぎた椎名咲笑が、持っていた大きなキャリーバッグから出てきたのだろうか、ローファーを玄関に置き、それを履いて、俺の方にまた振り返った。
その手には、スクールバッグと傘もあった。
……なんでも、揃ってる。
「あの、今日は何時頃お帰りですか?」
「……6時くらい、かな。」
「うーん、……オムライス、お好きですか?」
首を傾げながらも俺がこくんと頷くと、椎名咲笑はとびっきりの笑顔を見せ、では行ってきます、と言い、土砂降りの外へと出て行った。
大きくなった雨音が、扉が閉まることにより、また小さくなる。
「……めちゃめちゃ、可愛い。」
彼女が居なくなった玄関を見つめながら、陽翔がぼそっと呟いた。
「……でも、なんとかしないとまずい、よな。」
俺の言葉に、陽翔はうーん、と親指と人差し指に顎を乗せ、唸る。
「可愛いから、もういいんじゃね?」
さっきまで早く帰してあげた方がいいと言っていたくせに、ころっと考えを変えた陽翔に、俺は拳骨を降らせた。
「いって!なんだよもう!」
……とりあえず、帰ってきたら色々聞いてみるか。
そう心に決めて、さっさと陽翔と家を出た。
彼女が入れなくなるので、鍵は開けっ放しにしておいた。
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