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「朝賀(あさか)!」
昼休み。食堂できつねうどんの乗ったお盆を手に、陽翔と一緒に行動していると、誰かに名前を呼ばれた。
キョロキョロと辺りを見回し、その正体を探る。
「お、美桜じゃん。」
隣に居た陽翔と同じ方向に視線を向けると、一ノ瀬 美桜(いちのせ みお)が腰に手を当てて、こちらに早歩きで向かって来ていた。
「……一ノ瀬。」
一ノ瀬はカーブのきつい眉を更に吊り上げて、少し分厚い唇は、への字に曲がっていた。
嫌な予感がして、お盆をすぐそばにあったテーブルに置くと、一ノ瀬は俺の胸ぐらを掴んできた。
「菜乃花に何したのよ!!」
「美桜、ちょっと落ち着け。」
陽翔は慌てて一ノ瀬を俺から引き剥がそうとする。
「だっていきなり呼び出されたかと思ったら、大泣きしてたのよ!変な男と付き合い始めたりもして!」
一ノ瀬は俺の服を掴む手を一層強め、早口で陽翔にそう吐いた。
切れ長の瞳が、まっすぐと俺を捉え、睨みつける。
一ノ瀬は菜乃花の親友で、菜乃花とは一ノ瀬繋がりで、知り合った。
……陽翔が菜乃花と別れたことを知っていたのも、多分情報源はこいつだな。
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