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「あたしのこと、別に大して好きじゃないんでしょ。」
大きなキャリーバッグに自分の荷物を詰めながら、色素の薄い瞳いっぱいに涙を溜めた彼女、菜乃花(なのか)が、俺にそう言葉を放った。
「……そんなこと、ないけど。」
こういう時にかける言葉がよくわからなくて、俺はぶっきらぼうにこんな事しか口に出来ない。
「嘘、だってあたし、好きだって言われたこともないもん。」
もういっぱいになったバッグの中に、菜乃花はまだ荷物を詰め込んでいる。
そんなこと言われたって、好きだなんて、簡単に言えない、言いたくない。
どんなに大切に想っていても、口に出してしまったら、とても軽く、安っぽく聞こえてしまいそうで。
どうして女はこうやって、言葉をほしがるのだろう。
「……言わなくても、わかるだろ。」
そんな俺の変なプライドで、俺はたくさん彼女になってくれた人を傷つけていたけれど、これはどうしても譲れなかった。
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