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「ミツキ、まーたフラれたんだって?」
翌日。居酒屋でビールジョッキ片手に、顔を真っ赤に染めた冴木(さえき)先輩が、気の毒そうに俺を見つめ、ひっく、としゃっくりをした。
……相当酔ってるな。
そんな風に思いながら、俺はこくんと頷いた。
すると冴木先輩はげらげら笑いながら俺の背中をバシバシと叩く。
「まーあ、フラれることなんか、誰だってあるって!俺なんか一気に3人にフラれたかんね。」
……あんたは軽すぎんだってば。
見え透いた愛想笑いを浮かべると、その向かいにいた陽翔がぼそっとつぶやいた。
「3股して全員にバレただけだろ。」
背中の痛みがなくなったと思ったら冴木先輩には陽翔の言葉がしっかりと聞こえていたらしく、その視線は確かに陽翔を捉えていた。
「んだと!」
冴木先輩は立ち上がり、怒りをあらわにする。
陽翔はグビッ、とグラスの中身を飲み干すと、ほんのり赤く染まった顔で言った。
「俺ならもっと、うまくできますよ。先輩にいい方法を教えてあげます。」
……説得でも、してくれるかと思ったのに。
冴木先輩も大人しく座って食いついているし。
俺は陽翔を見損ないながらも、氷が溶けて薄くなったレモンサワーを飲み干し、ドリンクメニューに手を伸ばした。
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