第1章

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 運ばれてきた苦手なビールを喉に流し込むと、喉の奥は熱くなり、舌に苦味が走った。 俺は苦さに顔を顰めながらも、もう一口飲む。 やっぱりビールは、好きになれない。 酔いたくなるといつも頼んでしまうが、この味はどうも苦手だ。 隣でとても美味しそうに何杯も飲んでいる冴木先輩が、不思議で仕方なかった。 「それにしてもミツキは、顔はいいからモテるけど、付き合った女にはだいたいフラれてるよな。」 コトン、と空っぽになったグラスをテーブルに置きながら、有り得ない世界の話を終えた冴木先輩が、もう一度俺に話を振ってきた。 「ミツキの奴、冷たいからなぁー。菜乃花ちゃんとかめちゃめちゃ人気あるのに。もったいねぇ。」 すっかり顔を真っ赤に染めた陽翔が、ドリンクメニューを眺めながら、冴木先輩に続いて言う。 冷たい手を自分の頬に当てると、多分自分も随分赤いのだろう、顔はすっかり熱を持っていた。 「……やっぱり、言葉って大事なんでしょうか。」 俺は菜乃花の泣きながら怒る様子を思い出しながら、ふたりに問う。 「そんなの、適当に言っとけばいーじゃん。」 冴木先輩はケラケラ笑って、俺は3人全員に毎日好きだとか言ってたからね、と続けた。 ……この人に聞いたのが、間違いだった。
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