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運ばれてきた苦手なビールを喉に流し込むと、喉の奥は熱くなり、舌に苦味が走った。
俺は苦さに顔を顰めながらも、もう一口飲む。
やっぱりビールは、好きになれない。
酔いたくなるといつも頼んでしまうが、この味はどうも苦手だ。
隣でとても美味しそうに何杯も飲んでいる冴木先輩が、不思議で仕方なかった。
「それにしてもミツキは、顔はいいからモテるけど、付き合った女にはだいたいフラれてるよな。」
コトン、と空っぽになったグラスをテーブルに置きながら、有り得ない世界の話を終えた冴木先輩が、もう一度俺に話を振ってきた。
「ミツキの奴、冷たいからなぁー。菜乃花ちゃんとかめちゃめちゃ人気あるのに。もったいねぇ。」
すっかり顔を真っ赤に染めた陽翔が、ドリンクメニューを眺めながら、冴木先輩に続いて言う。
冷たい手を自分の頬に当てると、多分自分も随分赤いのだろう、顔はすっかり熱を持っていた。
「……やっぱり、言葉って大事なんでしょうか。」
俺は菜乃花の泣きながら怒る様子を思い出しながら、ふたりに問う。
「そんなの、適当に言っとけばいーじゃん。」
冴木先輩はケラケラ笑って、俺は3人全員に毎日好きだとか言ってたからね、と続けた。
……この人に聞いたのが、間違いだった。
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