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「お前…香水をつけてるだろ。」
「そ、それがどうしたって言うんだい?」
男はたじろいでルースの問いに答えた。ルースは鋭い目で男を睨む。
「オレは香水の知識は全く無いが、お前の香水は恐らくバニラのような甘ったるい匂い。この家に不審者が入った場所にも微かに同じ甘ったるい匂いがあった。」
「まさか…!?あなたが不審者ですか!」
「なッ!う、嘘を言うな!何を証拠にそんな事を言えるんだ!!」
動揺した男は住宅街だという事も考えずに大声で騒ぎだす。男の声は住宅の壁に跳ね返って鮮明に響く。
「証拠ならオレのこの嗅覚だ。疑うんなら今ここで警察犬の真似でもしてみせるが?」
ルースは歯を見せて唸るように言った。アシュレイも静かに腰に引っ掛けていた弓を手に取った。そこで、様子が気になったエリーザが家から出てきてしまった。
「皆さん…?」
「クソッ!」
真っ先に行動を起こしたのは男一人だけだった。思い通りにいかなかった男は悪態をつき目的のエリーザへと走り出した。
「エリーザさん!!」
「エリーザ、中に戻れ!!」
「えっ?!」
急な展開にエリーザは目を丸くする。アシュレイは雷の矢を弓に据えて男を狙うもなかなか焦点を合わせられない。男を阻むのは未だにおしるこに夢中になっているジゼルだけだった。当の本人は最後であろう餅を摘まんで余韻に浸っていた。
「どけ!!」
「あ…!」
男が無防備になっていたジゼルを押し退けた拍子に、摘まんでいた餅が飛ぶ。秒数も数えずに餅と器と箸がほぼ同時に地面に落ちた。その次にドサッと思いっきり物が地面に落ちる音。ルースがジゼルが転んだものと思って餅から視線を移すと、逆に男が地面に倒れていた。いや、倒れていたと言うよりジゼルが馬乗りになって倒していた。
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