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「…最後の餅だったのに…。」
「う、わぁっ!?」
男の目の上には短剣の切っ先が光っていた。シャーリングソード、ついさっきまで背負っていた剣が短くなったものだった。ジゼルはなおも怨念を男にぶつける。
「ねぇ…食べ物の恨みは恐いって知ってるよね。今すぐここで分からせてあげようか?」
良い顔でにっこりと笑うジゼル。だが、目は笑っていない。本気で怒っているようだった。男はその恐ろしさに堪らなくなる。
「ひいっ、ご、ごめんなさい!!!」
その流れをずっと見ていたアシュレイが弓を下ろしてひっそりと呟く。
「…ジゼル様って、食べ物に目がない鬼ですよね。」
男に興味を無くしたジゼルは、立ち上がって剣を鞘に戻す。振り返ったジゼルはもうすでにいつも通りの笑顔を浮かべていた。
「ねぇ、アシュレイ?今度はおしるこじゃなくてお団子も買いに行こうか。」
「鬼どころか…調子のいい悪魔だよ。」
ルースは呆れ果てて、空にぷかりと浮かぶ月を仰いだ。月は静かに、白い光を降り注いでいた。
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