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「あれ、どうしたの?珍しいわね」
「・・・あ、いや。いつものニュースじゃなかったから、落ち着かなくて」
「あー、そう言うのあるものね」
「じゃ、お父さん、チャンネル変えてもいい?」
彼の息子は目を輝かせた。
「・・・うん、好きなのを視るといい」
「本当にどうしたの?今日のあなた。あなたじゃないみたい。いつもなら、たっくんに子供の頃からニュースを視て勉強させなきゃって言うのに」
「・・・そう言う時もあるさ」
なんだろう、男の答えに一瞬家庭内の雰囲気が変わった。例えるなら、妻と男との初めてのデート。互いに、互いをよく知らず手探りで相手の様子を伺うような、けれども、男と結婚して10年になる。今更そんなことを感じるはずはないのに、どうしても感じてしまう。
「・・・どうかした?」
「ううん、なんでもない」
そうして妻は食卓についた。
「いただきまーす!」
元気のよいかけ声と共に夕食は始まった。その夕食がはじまって5分もしないうちに電話がなった。
男は立ち上がり取ろうとしたが、妻がそれを止めた。
「私が取るから。そのまま、食べてて」
「・・・あ、うん」
通話ボタンを押し、受話器を取った。
「木村でございます」
その後に、すぐ驚きの声を上げた。男も息子も、妻の方を見るが、手でなんでもないと言った。
それから小声で聞き返す。
「け、警察ですか?」
電話は警察からのものだった。妻はいったい何事かと、心臓がはちきれんばかりに鼓動が打ち、小刻みに震える足を必死に抑えた。
「木村さん、落ち着いて聞いてくださいね。ご主人がお亡くなりになりました」
「え?そんなはずは・・・」
妻の言い方に、警察は何かを感じ聞いた。
「どういうことですか?」
「どういうことって、今、主人は、その・・・リビングで夕食を食べてます。いるんです、自宅に・・・」
警察も、妻も沈黙した。
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