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開拓移民が集まる酒場があった。法の手の届かぬ無法地帯の男達は、酒と女が好物の無骨者。
そこに、一人の客がやって来た。
荒野の乾いた風と共に、煙草の煙を掻き分ける姿は、くたびれた労働者でなかった。
長旅に汚れた外套は擦り切れ、目深に被った帽子も穴が空いている。伸びてしまった金髪は適当に括られて細い背中で揺れていた。
「やぁ。景気はどうだい?」
カウンターに座ると帽子を脱ぎ、男は店主に笑みを向ける。その屈託ない笑みに店主は毒気を抜かれてしまう。一瞬前まで余所者に対する強い警戒心しかなかったのだ。
「一杯飲んだら、演奏しても良いかい? 今、手持ちがこれしかないんだ」
男はあっけらかんと笑い、外套の中からギターを取り出す。店主は一瞥し、無言で安酒を出す。男は嬉しそうに微笑むと店内の様子を見ながら、酒を煽る。
男の雰囲気に店主の脳裏には、一杯なら奢っても良いかもと言う思いが過っていた。
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