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天使は空へ昇る。まっすぐに。
人魚は海に潜る。天使のいる方へ。
少年は二人を見送り、そこで待つ事にした。浮島の上で、海流に流されながら。
空に昇るのは苦しい。厚い雲を突き抜け、雨に打たれ、強い風に吹かれ、まっすぐに昇るのは困難が付きまとった。
海の奥は体が悲鳴を上げる。強い海流と、体を締め付ける重さが、まっすぐに潜る人魚を阻んだ。
どんなに進んでもお互いの姿は見えない。やはり、何も無かったのだと思い、諦めかけた頃、遠くに何かが見えた。
暗い海の底でもがいている白い翼の天使。人魚は力を振り絞って向かう。新しい世界への憧れはそこに無かった。もがく天使があまりに苦しそうで、そばに行きたかった。
人魚に気付いた天使が手を伸ばす。だが、そこに壁があった。目に見えない壁が。
人魚は壁の向こうで喘ぐ天使に少しでも近づこうと泳ぐ。
天使は力を込めて壁を叩こうと近づいた。
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