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数回、壁を叩いて天使は力尽きた。もう息が続かない。
人魚が壁に顔を寄せる。何が出来るかわからなくて、必死だった。
天使はこれで最後と羽ばたき、人魚の苦労に報いようと顔を寄せた。
温度のない壁から、柔らかで暖かい感触と、空気が流れて来た。
天使が驚いて見上げると、人魚の手は壁を突き抜けて海から飛び出していた。
天使は人魚を抱き締める。
空が割れて、海が落ちる。
少年は海から気泡が上がって来るのを見た。何かが起きたのだと悟った。
空から落ちて来た二人は抱き合い、やり遂げたと微笑んでいた。
そして、海からの気泡が激しくなったと思うと、空から滝のような雨が降り、瞬く間に何も見えなくなった。二人が望みを叶えたのだけは解った。
雨が上がると、そこにあったのは、広大で起伏のある大地だった。
二人の姿はどこにもなかった。
少年は二人がこの大地を創造してくれたのだと感じた。
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