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これで物語は終わりだ、と吟遊詩人が言うと今までの盛り上がりから一変、悲嘆の息が漏れる。
「またいつかどこかで会えるさ」
吟遊詩人は明るい笑顔を見せてギターを構え、雰囲気に合わせて寂しげな曲を弾いた。
手拍子もなく、歌もない。踊りもなく、それは、ただただ寂しい演奏だった。
その時、酒場の扉を開けて男が入って来た。
最初に気付いた男は、飲みすぎたか、と眼を擦った。次に気付いた女は呆然と立ち尽くし、店主は驚きに目を見開いた。
「こんなしみったれた曲じゃなくて、楽しい曲にしようぜ?」
ギターを弾く吟遊詩人に言ったのは、今入って来た吟遊詩人。
背格好から相貌、伸びた金髪も、擦り切れた外套や穴の空いた帽子までそっくりな男だ。
客達の驚く様子を見て、双子は意地悪く笑う。その顔が見たかったのだ、と。
「驚かせた詫びに今夜は二人で歌うぞ!」
一人がギターを掲げて宣言し、もう一人が賛同した。
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