旅立つ吟遊詩人

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 馬に揺られ、双子は荒野を進む。 「あの歌、どこまでが本当だと思う?」 「さあな。昔からあるしな」 「だよなぁ」  披露しない決まりであるが、あの歌には続きがあった。  大地に乗り移った少年は決める。  この大地は二人が自分達のために創ってくれたもの。二人を忘れないために、語り継ごう。子や孫に、その次の向こうまで必ず継ごう。  そして、皆に広めよう。  あの場に立ち会った者として。  いつから曲に乗せて歌うようになったかは双子も知らない。生まれた時から旅を続けている一族にいて、それが当たり前だったから。父から子へ、証のように脈々と続く伝統を継承しているのだ。 「子供が出来たら教えないとな」 「そうだな。……久しぶりにあそこに戻るか?」 「ああ、良いな。あいつら元気かな?」 「顔見に行こうぜ」 「だいぶ待たせてるしな」  双子は荒野を進む。  天使と人魚と浮島の物語を語り継ぐために。
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