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遥か遠い昔の事。少年は海の向こうを知らなかった。海の先では毎日太陽が生まれるのか、はたまた、ただただ続いているのか。
大人達は日々を享受し、少年の疑問には耳を貸さない。考えても仕方ないと言うばかり。諦め切れぬ少年は、今日も海を眺める。
泳ぎだしても、船を作っても、島からは抜け出せずに、少年は海を想う。手を伸ばしても届かぬ先へ。
新しい世界を見たい。
遥か遠い昔の事。人魚は海しか知らなかった。海の底は輝いているのか、はたまた、底など無いのか。
諦めた心は囁く。疲れたなら沈んでしまえと。浮かべば空に焦がれるから。青い空があんまりにも綺麗だから。
底の無い海と、手の届かぬ空。人魚は空に焦がれる、跳んでも届かぬ空に。
新しい世界を見たい。
遥か遠い昔の事。天使は青しか知らなかった。空の青と海の青、果てもなく続く青い世界。
空の上から雨が降る。雲の上から降る雨。どんなに高く昇っても、空の向こうは見えない。
新しい世界を見たい。
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