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幾星霜の昔。人は浮島にいた。
小さな島は平和で、しかしあまりに退屈だった。
海に流される島。人はそれさえ知らず、何も変わらない景色を当たり前としていた。
少年には窮屈な島。いつも海を眺めていた。
人魚が少年を見たのは、そんな小さな姿。堪らずに声をかけた。
少年は息を飲む。美しい人魚の姿に。そして、島の外の存在。驚きに声が出なかった。
天使が二人と出会った。強い風に流されて、辿りついたのが島。少年の側であった。
人魚と天使は寄り添い、手を握り合う。もう一人は嫌だと。少年も二人が大事。大人には秘密と誓う。
朝日が登ると少年は島の縁に行く。人魚は海から顔を出し、天使は空から降りる。
平穏な時間が流れる。新しい世界には友が、新しい感情が生まれる場所だった。
小さな浮島は人魚と天使が、好奇心を満たすには十分だった。少年は二人の間に入れずにいた。
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