笑う吟遊詩人

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 吟遊詩人が歌い終えると拍手と歓声が沸き起こった。 「兄ちゃん続きを歌えよ!」  ジョッキを振り上げてリクエストを送る客に、吟遊詩人は笑う。 「続きは明日。今日全部歌ったら、明日の目玉が無くなるだろ?」  そう言って声を上げて笑った。帽子を客に向けると、気を良くした彼らは少ないながらも金を入れていく。娯楽の少ない彼らにとって、吟遊詩人の歌とギターは金を払って聴けるならもっと聴きたい物だった。  帽子の穴から金がこぼれそうになり、彼は笑いながら懐から布袋を取り出して入れる。 「さて、沢山頂いたし、今夜は歌うぞ!」  吟遊詩人は小銭の詰まった布袋を掲げて感謝を表す。無骨者達は乗りの良い彼に気分を良くして笑い声を上げる。  吟遊詩人がギターを構えると、無骨者達は口を閉ざす。先程の歌の様な、じっくりと楽しめる曲ならば静かに聞こうと言う姿勢だ。  が、次の曲は小躍りしたくなるようなリズミカルだった。
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