第13球ーNinesー

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ブロロロ… 車が揺れ、少し心地良い眠気が差し込むが興奮が勝りすぐに覚醒する。 「時雄、」 「ん?」 翔子は何気なく口火を切った。 「頑張れですって、父さんが。」 「…うん。」 エナメルのカバンを抱え、時雄は助手席で頷いた。 翔子の目には、少しだけ涙が浮かんでいた。 「頑張りなさい、雪雄の分まで……ね?」 「うん…分かってるよ、母さん。」 嬉しい反面、亡き息子の無念が母の胸を締め付けていたのは確実だった。 だから… 「真希に、父さんに、母さんに、そんで…兄貴に。 俺は見せるよ、‘‘奇跡の左腕”。」 「そうね、見せて貰わなきゃね。」 兄との約束を、永遠に誓った。 「…やっぱだせぇな、この刺繍。」 「こらっ!!!!!」
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