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ブロロロ…
車が揺れ、少し心地良い眠気が差し込むが興奮が勝りすぐに覚醒する。
「時雄、」
「ん?」
翔子は何気なく口火を切った。
「頑張れですって、父さんが。」
「…うん。」
エナメルのカバンを抱え、時雄は助手席で頷いた。
翔子の目には、少しだけ涙が浮かんでいた。
「頑張りなさい、雪雄の分まで……ね?」
「うん…分かってるよ、母さん。」
嬉しい反面、亡き息子の無念が母の胸を締め付けていたのは確実だった。
だから…
「真希に、父さんに、母さんに、そんで…兄貴に。
俺は見せるよ、‘‘奇跡の左腕”。」
「そうね、見せて貰わなきゃね。」
兄との約束を、永遠に誓った。
「…やっぱだせぇな、この刺繍。」
「こらっ!!!!!」
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