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ドタドタ…
早朝に響く、階段を駆け下りる音。
居間に入れば、実妹がトーストを頬張っていた。寝起きか、目が少し細い。
「あ、おはよー時兄。」
「オス、ん?真希お前…身長伸びたか?」
時雄の問いに真希は眠気を瞬時に吹き飛ばした。
「分かった!?1cm伸びたんだよ!!1cm!!ヤバくない!?」
「そんだけかよ…」
「そんだけとは…何様じゃあぁぁ!?」
「うぉ!?おいバカ!落ち着け真希!ちょ…父さん母さん!!コイツを止めてぇぇぇ!!」
朝から騒々しい宮藤家。いつもと変わらない日常だが、一つだけ以前と変わった事がある。
「じゃ、朝練行って来まーす。」
「おっ?気をつけろよ時雄。」
「ん。」
トーストを咥えて玄関内に止めてある自転車を転がす。
「時雄、雪雄に線香は?」
「あ。」
母・翔子に言われ、日課を忘れていた事に気付く。
仏壇に備えられた無垢な笑顔を浮かべる実兄・雪雄。
「行ってくる、兄貴。」
『大丈夫、できるさ…なんたって俺の…弟だから…よ。』
「兄貴…」
兄からの最後の言葉を思い出し、自転車を走らせた。
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