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「僕の名前はルー」
「私の名前はリー」
「ルーはリーのお兄さん」
「リーはルーの妹ちゃん」
『2人は仲良くいつでもとなり!』
2人は僕の手を引きながら、山の中を踊るように走る。
凸凹道を2人は転ぶこともなく進んでいくが、それとは反対に両手を塞がれバランスを取るのも難しい中僕は、息を切らしてついていくのが精一杯だった。
ここがどこなのか、正直検討もほとんどついていない。
だがひとつ、わかることがある。
ここは僕が望んでいたあの世界ではない世界だと言うこと。
僕はそれを認識した途端、笑みをこぼした。
「ねぇ、ルーとリー」
「なーに?」
「なーに?」
二人して順番に後ろを振り返り、僕の顔を見る。
それでも足は止めず、手も離さないままでいられるこの子たちはきっと普通じゃない。
「僕をどこに連れて行くの?」
「ひーみつ!」
「だけど僕達は君を案内する!」
「君たちは人間なの?」
「ブッブー!!」
「僕達は人間じゃないよ!」
“人間じゃない”
それならばいったいこの子達はなんなのだろうか。
言うまでもなく、見た目は人間。
身体能力は人間以上。
あぁ、とんでもないところへ来てしまったのかもしれない。
それでも後悔はない。むしろ期待と好奇心が膨らんでいく。
「わかった、ここは素敵な場所?」
「素敵かどうかは」
「あなたが決める」
2人は踊るように走っていた足を止めて、僕の手を離してまた踊るようにくるんと振り返る。
いつの間にか山を下り終わっていたみたいで、目の前には崖の上から見下ろしていた街が広がっていた。
「ようこそ!」
「この街へ!」
「街は君を歓迎してる!」
「僕らも君を歓迎してる!」
2人はきゃいきゃいと嬉しそうにはしゃぐ。
もちろん僕も嬉しくて。
これからのことに胸をおどらせた。
バッドエンドでも、ハッピーエンドでもいい。
この世界を僕は知りたい。
未知の世界に向ける牙はいらない。
必要なのは好奇心と冷静な思考だ。
前の世界は僕の中でいったん幕を引いた。
「さて、準備は整った」
僕は大きく伸びをする。
「おねーさんをこれからお城に招待するよ!」
「おねーさんはこれからお城に向かうの!」
2人は僕の手を再びとって、街の中を駆け出した。
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