第一章 幕引き

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「僕の名前はルー」 「私の名前はリー」 「ルーはリーのお兄さん」 「リーはルーの妹ちゃん」 『2人は仲良くいつでもとなり!』 2人は僕の手を引きながら、山の中を踊るように走る。 凸凹道を2人は転ぶこともなく進んでいくが、それとは反対に両手を塞がれバランスを取るのも難しい中僕は、息を切らしてついていくのが精一杯だった。 ここがどこなのか、正直検討もほとんどついていない。 だがひとつ、わかることがある。 ここは僕が望んでいたあの世界ではない世界だと言うこと。 僕はそれを認識した途端、笑みをこぼした。 「ねぇ、ルーとリー」 「なーに?」 「なーに?」 二人して順番に後ろを振り返り、僕の顔を見る。 それでも足は止めず、手も離さないままでいられるこの子たちはきっと普通じゃない。 「僕をどこに連れて行くの?」 「ひーみつ!」 「だけど僕達は君を案内する!」 「君たちは人間なの?」 「ブッブー!!」 「僕達は人間じゃないよ!」 “人間じゃない” それならばいったいこの子達はなんなのだろうか。 言うまでもなく、見た目は人間。 身体能力は人間以上。 あぁ、とんでもないところへ来てしまったのかもしれない。 それでも後悔はない。むしろ期待と好奇心が膨らんでいく。 「わかった、ここは素敵な場所?」 「素敵かどうかは」 「あなたが決める」 2人は踊るように走っていた足を止めて、僕の手を離してまた踊るようにくるんと振り返る。 いつの間にか山を下り終わっていたみたいで、目の前には崖の上から見下ろしていた街が広がっていた。 「ようこそ!」 「この街へ!」 「街は君を歓迎してる!」 「僕らも君を歓迎してる!」 2人はきゃいきゃいと嬉しそうにはしゃぐ。 もちろん僕も嬉しくて。 これからのことに胸をおどらせた。 バッドエンドでも、ハッピーエンドでもいい。 この世界を僕は知りたい。 未知の世界に向ける牙はいらない。 必要なのは好奇心と冷静な思考だ。 前の世界は僕の中でいったん幕を引いた。 「さて、準備は整った」 僕は大きく伸びをする。 「おねーさんをこれからお城に招待するよ!」 「おねーさんはこれからお城に向かうの!」 2人は僕の手を再びとって、街の中を駆け出した。
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