第二章 『葵の頃に』

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「良かったですね、自然に『友達になりたい』と思える方に出会えて」 優しい笑顔を向けるホームズさんに、何も言えないままコクリと頷いた。 そうだ。 理屈じゃなくて、『この人と友達になりたい』って思ったんだ。 ふぅ、と息をついて、改めてホームズさんを見た。 「……大ごとになることなく、無事、解決して良かったですよね」 静かに漏らした私に、 「お二人が素直に打ち明けることが出来たのは、場所も良かったのかもしれませんね」 とホームズさんは森を見回して目を細めた。 「そうですね、すごく神聖な雰囲気だし」 コクリと頷いた私に、ホームズさんは笑みを浮かべた。 「それもそうですけど、『糺の森』の由来をご存知ですか?」 「え、由来ですか?」 「糺の森は祭神の『賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)』が、この鎮守の森で裁判を行ったという神話に由来するそうです。『糺す』とは取り調べること。 ここは、神々の裁判所だったんですよ」 天を仰ぎながら言うホームズさんに、私は大きく目を開いた。 爽やかな風が吹き抜ける。
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