第二章 『葵の頃に』

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「さて、本殿に参拝しに行きましょうか」 「あ、はい。せっかくですもんね」 と私たちも参道を歩いた。 朱色の鳥居の向こうに、同じく朱色のそれは立派な楼門が見える。 手前左側には、二つの木が、一つに重なったという不思議な木も。 縁結びとして、知られているらしい。 本殿へと続く門をくぐると、十二支の神様を祭った社がグルリと並び囲んでいて、その先中央に大きな社殿がある。 ここには鈴はない。 うんと古くからある神社には、鈴がないことが多いと、って以前ガイドさんが話しているのを聞いたことがあった。 参拝したあと、ホームズさんは腕時計に目を向けた。 「――まだ、9時前ですか。 葵さん、もし良かったら、モーニングでも食べに行きませんか?」 「は、はい、ぜひ。実は朝から何も食べてないんです」 「それは良かった。この近くにおススメのカフェがあるんですよ」 「わぁ、楽しみです。あ、その前におみくじ引いてもいいですか?」 「ええ、下鴨さんのおみくじは、格言なんかも書かれていまして、なかなか興味深いんですよ」 「さすが、なんでも詳しいですね」 なんて話しながら、私たちはおみくじを引いて、神社を後にした。
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