序 章 『ホームズと白隠禅師』

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「あの、どうして私が『良い目』を持っているって? それに、どうして住んでる場所まで分かったんですか?」 気になっていたこと尋ねると彼はクスリと笑った。 「君がさっき足を止めて見入っていた茶碗。あれは、『志野の茶碗』なんです。僕の祖父の宝のひとつなんですが」 「シノの茶碗?」 「桃山時代の国宝でしてね、失くしてしまったら、もう二度と作られない名品と言われているんですよ」 「……はぁ」 「値段にすると、6千万といったところかな」 耳元でそう告げた彼に、 「ろ、ろくせん? そんなすごい物をあんなところに置いといて大丈夫なんですか?」 仰天しつつ、声を潜めながら尋ねた。
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