第一章 『願わくは、桜の下にて』

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「それじゃあ、いってきまーす」 4月はじめの土曜日。 念入りに髪を整え終えた私は、ドタバタと階段を駆け下りて玄関へと向かった。 「こら、葵、階段を駆け降りない!」 リビングから顔を出して、声を上げる母に、 「はーい」 簡単な返事をして、スニーカーに足を滑らせる。 「今日はバイトなの?」 「うん」 「それにしては、出るの早くない?」 時計を確認しながら尋ねる母に、 「今日はちょっと、自転車で遠回りしようと思って。 それじゃあ、いってきます」 改めてそう言って家を飛び出て、そのまま家の前に置いてある自転車に跨った。
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