第一章 『願わくは、桜の下にて』

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漕ぎ出した瞬間、ふわりと風が頬を撫でる。 新緑の香りを含んだ、暖かい春の風だ。 (ああ、気持ちいい) 夏は殺人的に暑いし、今のこの季節が本当に最高だと思う。 自転車で軽快に走って、下鴨本通という縦の通りを南へと下っていく。 今出川通という横道を越えると、『下鴨本通』は『河原町通』という名に変わる。 バイト先である寺町三条に行くには、この河原町通をただ南下していくだけ。 だからいつもは、このままひたすら真っ直ぐに走っているんだけど、今日は今出川通を左に曲がり、鴨川へと向かった。
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