第一章 『願わくは、桜の下にて』

10/88
前へ
/606ページ
次へ
――― ――――― ―――――――― 「おはようございます」 いつものように、店の前で呼吸を整えてから、アンティークな扉を開けた。 カランとドアベルが鳴ると同時に、カウンターに座る二人の男性の姿が目に映る。 「おはようございます、葵さん」 一人は私をバイトに誘ってくれたホームズさんこと、家頭清貴さん。 そしてもう一人は…… 「おはよう、葵さん」 ホームズさんのお父さん、家頭武史さん。 細身の身体に眼鏡にベスト姿、穏やかな微笑みはホームズさんによく似た雰囲気だ。 「今日もよろしくお願いします」 私は改めてペコリと頭を下げた。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37927人が本棚に入れています
本棚に追加