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「どういう意味だ?」
「だから、」
と言った私は一歩後退りした。
……一瞬だけど、神祁がものすごく悲しい表情を作ったからだ。
それはほんとに一瞬で、そんな神祁の顔を見たのも初めてで、胸がチクリッと痛みを訴えてくる。
どうして、そんなに辛そうな顔をするの?
一瞬……誰の事を考えたの?
もしかして夏さんの事を思い出したの!?
……そのまま神祁は何事もなかったかのように、黒のシャツを手にして袖を通す。
完全に背を向けられて、再びその表情を読み取れないようにされた。
でもさっき見せた辛そうな表情だけは、脳裏に焼きついて離れない―――。
気がついたら私は、知らず知らずのうちに涙を流していた。
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