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「沙乃ちゃーん!」
朝からゆったりとしたネイルサロンのオフィス内。
上司が機嫌良さそうに話をかけて来た。
「この間の美容室かなり良かったよー!」
「でしょ!あそこなかなかの穴場なんですよ。」
行きつけの美容室を紹介した《山川 沙乃》はノリ良く受け答えをする。
先日、彼女も行ったばかりでアッシュブラウンにした髪の毛は仕事仲間に評判が良く皆こぞって聞いてきた。
地元である春日町を出てから既に9年の歳月が過ぎた。
あの事件以来、沙乃は春日を離れ都内の学校へ転校。
高校卒業後、専門学校へ通った後にこのネイルサロンでネイリストとして働いている。
「沙乃ちゃん。松永さん来たよ!」
「いらっしゃーい。」
持ち前の愛嬌と手先の起用さで沙乃の指名のリピート客は多い。
昼からはギッシリと予約が入っている。
「久しぶりぃ。他のお店に浮気してたでしょ?」
「ごめん!しばらく県外に行ってて帰って来れなかった!!」
指名客の爪を見ると沙乃がデザインしたものとは違うデザインのネイルが施されていた。
「まぁ、やっぱり沙乃さんが作ってくれるネイルが1番だったよ。」
「マジで?お世辞でもありがたいわ。」
「いや、本当だって!!」
会話を弾ませながらジェルネイルを液で溶かし、完璧にオフにして行くのは子慣れたものだ。
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